都心部の住宅に要求される「耐火性能」

東京の都心部で家を建てる場合、火災による周辺の延焼を防ぐために建築基準法による耐火性能を厳守する必要があります。

材木店として創業した土手加藤材木店は、深い木材の知見を生かし、工務店としては数少ない木造耐火の建築を得意としています。

「防火地域」と「準防火地域」の制約

都市計画法では、「防火地域」と「準防火地域」という防災上の地域区分があります。

市街地など建物が密集しているような地域では、火災が発生すると周辺にも火災が燃え広がり大火災となる可能性があります。

被害をできるだけ抑えるために、隣地や周辺の建物への延焼を避けるべく燃えにくい構造にし、地域全体で都市防災を図ることが必要となりました。

このような地域に新たに建物を建てるときには、一定の制限が課されます。

この「防火地域」と「準防火地域」は各自治体が独自に制定をしていますが、2003年に東京都建築安全条例に基づき「新たな防火規制区域」が追加されました。

規制の厳しさは以下の通りになります。

防火地域 > 新たな防火規制地域 > 準防火地域

「耐火建築物」と「準耐火建築物」とは

「防火地域」、「新たな防火規制地域」と「準防火地域」では、それぞれ階数と床面積によって採用すべき耐火構造が決まっています。

耐火性能の高い順に、「耐火建築物」「準耐火建築物」「防火構造」です。

建築物の外周部では外壁や軒裏や開口部、内部では壁や床・天井、階段などに各レベルに応じた耐火性能が求められます。

外周部は周辺や隣地からの火災を想定した基準が設定されており、特に外壁構造には高い耐火性能が求められています。

なお、各レベルの基準に合わせて外壁の下地を造りますが、外観の仕上がりには違いはありません。

▼耐火建築物

柱、梁、外壁など主要構造体を耐火構造としたもので、鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、または木造があります。

開口部は防火サッシ、防火ドアとしなければなりません。

耐火性能上、最も厳しい建築物となります。

▼準耐火建築物

柱、梁、外壁など主要構造体を準耐火構造としたもので、耐火建築物ほどの厳しい規制はありません。

鉄骨造、耐火被覆をした木造建築物です。

開口部は耐火構造と同じ性能です。

▼防火構造

外壁と軒裏にモルタルなどを施工するなどの防火措置を施した建築物。

柱や梁などに耐火被覆をしなくても可能な住宅になります。

実は「木材」は火にも強い

これまで防火地域での耐火建築物というと鉄筋コンクリートや鉄骨が多く使われてきましたが、技術の発達により、近年では木造でも耐火建築物で住宅を建築することができるようになりました。

防火地域では、一定の条件をクリアすれば準耐火建築物の建築も可能になりました。

また、性能が確認されたことで、準耐火建築物を木造で建てる場合の基準も緩和されました。

通常、木材には耐火被覆が必要になりますが、燃えしろ設計や材木自体の厚みを増やすことで火災の際の延焼を遅らせることが可能なことから、柱や梁、階段や軒裏にも材木をそのまま活かした設計ができるようになりました。

燃えやすいイメージのある木材ですが、厚みを持たせた木材は、実は火に強いのです。

木が燃えると表面は炭になりますが、その炭化層が耐火層となり、中心部まで火はなかなか到達しません。

木には元々自然の耐火性能が備わっているため、火災時にも建物の倒壊がしにくいのです。

昨今では都心部でも木造建築物の可能性が飛躍的に広がっており、お客様のご要望に応える家づくりが可能になっています。

材木をそのまま活かした設計

準耐火構造の軒裏
野地板厚みを30㎜として耐火被覆無しで木材を現しにしている
燃えしろ設計による屋根垂木
屋根垂木の断面を厚くすることで木材を現しにしている
準耐火構造のリビング階段
踏み板と力桁共に厚みを60㎜以上として耐火被覆無しで木材を現している