最近手道具の紹介が続いてますが、今回は角度の話です。
大工が使う道具の七割から八割が何らかの形で、金属を使用している道具です。
その中でも、切削作業に使う刃物関係が多くを占めます。
ノミやカンナ、ノコギリ、電動工具にも替え刃ですが刃物が付いています。
そのほとんどが「片刃」と言われる、片方が平面(裏)でもう片方が斜め(研ぎ面)になっています。
加工する木材によって、その裏に対する研ぎ面の理想角度があります。
今回は、その角度について紹介したいと思います。

簡単に言ってしまえば、固い木材には”鈍角”に柔らかい木材には”鋭角”に研いだ刃物が理想です。
表に書いてある欅(ケヤキ)楢(ナラ)桜(サクラ)などは堅木に属します。
弊社では主に、窓枠から家具のカウンターまで杉(スギ)か桧(ヒノキ)がほとんどです。
なので、カンナの刃角は27°~29°に設定しています。
たまに、海外の木材ですがブラックウォールナットやタモ材を削ることもあります。
その場合は、刃角を少し”起こして”鈍角に調整してから削ります。
あくまでも理想とする角度なので、現場ではそれぞれ加工する者のカンで研いでいるのが事実です。

ですが、理想とする数字が出ているということはそれなりに研究された結果だと思います。
今では、こんな定規まで売られていて重宝しています。
販売元の名前などが表記されていないので、紹介できないのが残念ですが。
どうしても普段感覚で研いでいると、刃角が荒れます。
いつも通り研いでいるつもりでも、個人個人のクセが出てしまいます。
毎回、定規を当てて調整している時間は正直ないので、たまに確認のつもりで使います。

このカンナは今回下ろしたての新品です。
台が挿げられた状態のカンナを新品で買うと、荒研ぎのみ済ませてあるものがほとんどです。
新品を買って、まずすることは自分の好みの角度の直すことです。
上の写真では、角度を起こす為に一度”二段刃”にしています。
新品の状態で25°だった刃角を28°にしたいので、まずは刃先を強めに研ぎ下ろしていきます。
ただ28°キープで研ぎ進めると時間がかなりかかってしまいます。
なので、始めは刃先を30°くらいにかなり起こして研ぎます。
写真では、もとの角度25°と30°に起こした刃先との境目が山型に高く残ります。
ある程度30°で研いだら、境目の山を潰すように研ぎ、最終的に28°になるようにします。

若干角にまだ甘い所がありますが、全体的に28°角に研ぎ下ろしました。
だいたいここまでで2時間~3時間かかります。
ただ、実際削ってみて自分の引き方や台との調子を照らし合わせてさらに調整が必要です。
なので、理想角度はあくまでも基準として考えています。

角度が決まったら、仕上げ研ぎです。
目の粗い中砥石で角度を合わせた後、目の細かい仕上げ砥石で研ぎ、刃を付けます。
刃全体が砥石に完全に当たってくると、刃と砥石がくっ付いて手を離すとカンナが立ちます。
私はまだ研ぎが未熟なので、ビクビクですが凄い方になると砥石を持ち上げることもできます。
刃先全てがしっかり仕上がっているということと、手の動きがブレていないことの証明になります。
さて、角度が決まったので日曜にもう一度裏出しをして台も調整します。
調整が終われば、晴れて現場デビューです。
どんな力を発揮してくれるのか楽しみです。