おはようございます。
見習い大工の眞利子です。
先週は機械作里を紹介しました。
機械作里の名前の通り、精密な加工ができる電動工具により近い鉋です。
さて、今日は同じ溝も仕上げることのできる鉋を紹介したいと思います。
ですが今日の鉋、一目見ただけではどうやって使う鉋なのかわからないと思います。
慣れればとても使い勝手の良い鉋です。
機械作里と同じく、姿を消しつつある鉋ではあります。

その鉋、名前を「五徳鉋」ごとくかんなと言います。
五つの徳と書くように、これ一丁で様々な使い方ができる鉋なんです!
一見しただけでは、作里と言うより仕上げ鉋に見えると思います。
見た目通り、一つ目の徳は平鉋として使えることです。
ですが、普通の平鉋のようにシューっと長い削り屑を出すことはできません。
刃と台の形が特殊な為、平使いしても仕上げ鉋にはならないんです。
あくまでもクセを取る(木材を平らに削る)為のみの平鉋です。

台から刃を外すと、不思議な形がよくわかりますね。
逆目を止める裏刃と二枚セットになっているのは普通の鉋と変わりません。
始めに言った、消滅しつつある理由の一つがこの形の特殊さです。
昔は五徳鉋専門の鍛冶屋さんがこれだけを毎日作っていたそうです。
「よくこんな難しくて、細々ややこしい仕事をずっと続けてられる」と金物屋さんも言うくらいです。
今、特注で作ってもらうと5,6万円はします。
自分は中古で買いましたが、形状的に鋼が短いので何年も持ちそうにありません。
機械作里と違い、刻み等でかなり活躍してくれるのですぐに研ぎ減ってしまいます。

木口から見ると、台も特殊なのが分かります。
凸型をした台に、ヘラ状の刃が収まっています。
木口をみると作里に似た形を確認出来ますね。
この左右の突起が、他の四つ徳に関係があります。

図にすると分かりやすいと思います。
五徳とは、平使い、際取り左右、脇取り左右、合計で五つの使い道のことです。
木材の角を削りたい瞬間は意外に多く、専用の「際鉋」きわかんなもあります。
際鉋左右と脇取りはまた次回紹介したいと思います。
これら、四丁分の役割を一丁で解決できる訳です。
また、凸型のおかげで突起の部分が取っ手のような意味も果たしてくれます。
自分は追っかけ継ぎ手の噛み合わせの調整に使う為に買いました。
宮大工さんなどは、よく持っているそうです。
研ぎものや台の調整は比較的難しいですが、その分いじるのは楽しいです。
今度は実演出来たらと思います。