見習い大工の真利子です。
今週末、あいにくの雨模様で心配ですが本郷の現場で建前をします。
昨日、下小屋で刻んだ部材を現場に運びこみました。
三階分の部材ですから、かなりの量です。
さて、大きな部材と床合板が運び出された下小屋は通常のガランとした風景に戻りつつあります。
今日は、刻み終わった下小屋で製作途中の「わざわ座の家具」と自作の脚立を比較したいと思います。

右側のハタ金で締め込んでいるものが、わざわ座の椅子です。
細かな形状については、何度か紹介しているので省略します。
比較する為に隣に置いたものは、訓練校で製作した「四方転びの脚立」です。
こちらも随分前ですが、紹介したものです。
わざわ座の椅子は半端材等の有効活用と大工でも作れる家具をコンセプトにしているそうです。
今回の使用材も端切り等で出た、ブラックウォールナットを使いました。
一方脚立は、完全な教材です。
大工に必要不可欠なサシガネ使いを勉強する為の実技でした。
この二つ、どちらも全く違う難しさを持っています。
椅子は、部材同士が組み合わさる「胴付」部分の多さ。
脚立は、ホゾ等の組手が見えるので加工精度の高さを求められる点です。
自分は正直、胴付の方が苦手です。
今回特に、使える機械も少なく精度が出しづらかったです。

胴付きを精度良く組み立てるには、部材が直角か、幅は均一かなど様々な要因があります。
それらを前提に加工精度も高くしなければなりません。
今回、材料の直角を出す機械が修理中で使えないのと、面取りに使うトリマーも壊れてしまいました。
サシガネで直角を確認しながら、電気カンナで幅合わせをし、面取りはノミと鉋です。
写真は足が地面に触れる部分の面取りです。
図面では丸面9Rの指定があります。
毛引きで9Rの部分にケガキします。

お寺などの丸柱の場合、角材の角を徐々に落とし最後は内丸鉋で馴染ませて仕上げるそうです。
丸柱からは比べ物にならない仕事ですが、考えは一緒です。
角をノミでさらい、五角形にします。

通常大工仕事で扱うノミは彫刻等と違い、叩いてのみ使用するのが基本です。
ですが、応用はいくらでも出来ます。
自分は叩いている時より、刃先を滑らせている時の刃物の切れ方の方が好きです。

紙ヤスリで馴染ませて完成です。
だいたい9Rの面になりました。
こういった小細工は割かし好きです。
本当に難しいのは、直角の材を真っすぐ鋸で挽くことだと思います。
最終的に胴付の精度も皆、鋸目一本で左右されます。
マルノコで挽いてしまえばいとも簡単に出来ます。
トリマーさえあれば、9Rの専用ビットを付けるだけです。
ですが、今回のように機械が使えない場合もあります。
どちらの技術も必要なんだと改めて気づきます。
刻み作業では機械を最大限に使い、手道具はその補助的のな役割を担っています。
ですがもし、機械が壊れた場合や機械をセットするまでもない場合は手道具のみでも加工できます。
応用が効いて身軽な手道具はきっと、機械がどんなに普及しても消えることはないんだと思いました。