見習い大工の真利子です。
昨日、市場から材木が入ってきました。
文京区で来月二十日を建前予定とする、耐火木造三階建ての新築現場の部材です。
材種は米松です。
米松は強度が高く、現在の在来軸組みでは柱や土台を除くほとんどの部材に多く使われています。

米松は、杉や桧に比べて重量があり節もかなり硬いです。
しっかり研いだ刃物で加工しないと、木の硬さに刃が負けてしまいます。
親方は部材一本一本の反り、節の位置などを見てから一番良い部分を取れるよう墨付けしています。
刻み作業は墨の意味さえ理解できれば、誰でもこなせる作業です。
早速刻んでいますが、自分と弟弟子の違いは作業スピードの違いくらいしかありません。
マルノコ、角のみ、ドリルなど電気工具を最大限利用する今、加工精度の個人差は微々たるものです。

二階、三階、小屋組みの部材が入る前、先週中に土台は刻み終わっています。
写真はいち早く終わった土台の刻み風景です。
土台は桧の四寸角です。
柱も同じ、桧の四寸角を使用します。
土台は、建物全ての荷重を背負う部材です。
一番大事な部材とも言えます。
桧やヒバなど一部の材種を除いて通常は防腐防蟻塗料を塗るのが義務付けられています。
なぜ桧は良いかというと、桧そのものに含まれている成分に防腐防蟻効果があるからです。
桧特有の香りが、その成分(ヒノキチオール)が発する香りです。

刻みが終わった土台です。
二現場ぶりに土台を刻みました。
いつも、前現場と刻み作業が少し被るため、親方が墨付けから刻みまですることが多かったです。
今回は弟弟子が最後の補修などを担当してくれたので、その分墨付けと同時に自分が刻めました。
桧は、昔から建物を建てる最良材とされてきました。
一つには、腐食しにくいこと。
また、とても粘り強い性質を持ち大きな力が加わっても十分耐えうる強度もあります。
そして、もう一つあげるなら加工がしやすいことです。
桧は切り出されて、部材に加工されてから徐々に硬化し強度も比例して年々強くなるそうです。
つまり、刻み時は比較的柔らかく加工しやすいんですね。
節は米松に負けないくらい硬いですが、刻み始めは桧からできると刃物も傷まずに済みます。

刻みが始まると、広い作業スペースが必要になります。
大きな機械はなるべく奥へ押しやられます。
緑色の自動(右)と手押し(中央)に挟まれた小さな二つの機械は刻みで大活躍します。
毎回思うことですが、機械で加工してしまうのがもったいないです。
一つ一つ手道具で掘れば、その分木の性質から道具の扱いまでもっと深く感じれるのにと思います。
ですが、そんなことをしていては刻みのみで二、三か月掛かってしまいます。
余裕を見つけては、手鋸を使い、穴も鑿のみで掘るなど少しでも経験を積みたいです。