見習い大工の眞利子です。
今週は少し新築の現場を抜け出して、文京区の湯島で店舗工事をしています。
久しぶりの店舗工事です。
解体が終わり、新しく設置する入り口枠の打ち合わせの時、面白い話題になりましたので紹介します。

その話題というのが、建具が収まる「鴨居溝の調整」についてでした。
今では、溝を掘る専用の機械がありますが昔は特殊な鉋を使って彫り込んだそうです。
新規製作の場合、そういった特殊鉋を使うことは滅多にありません。
機械に付ける刃を取り換えたり、定規で深さを合わせればそのまま仕上がってしまうからです。
ですが、特殊鉋が消滅してしまった訳ではありません。
無垢の木で製作した、枠と建具ですから実際使い始めてからの微調整というのが必ず現れます。
一つ一つの部材ではなく、完成しているものの調整にはやはり手道具が必要不可欠です。

実際「特殊鉋」と呼ばれる鉋はかなりの種類があります。
メカのような、一見使用用途が想像できないものもたくさん存在します。
ほとんどが深さと幅の決まった溝を加工するのに使う「作里」サクリの一種です。
図に描いてみた二種類の鉋は、作里の中でも今でも使用されることが多いものです。
左が溝の底を削り、深さ調整するのに使う「底取り鉋」です。
だいたい刃の幅は七分(21ミリ)です。
障子や襖、入り口戸の溝幅は基本七分だからです。
右は、底取りで深さを決めた溝の脇を仕上げる「脇取り鉋」です。
自分も溝を手鉋のみで掘ったことはないので、脇取りはほとんど使ったことがありません。
溝の底から側面まで仕上げる仕事なんて想像を絶しますね・・・

底取り鉋は、溝を掘るのみではなく色々と応用ができるので、重宝しています。
刃の角度や台の調整は普通の平鉋より難しいです。
ですが、その分調整も面白い作業です。
写真は木製の取っ手を作っている最中ですが、細かい加工が必要な時はやはり手鉋の方が扱い良いです。

最後に紹介するのは、一丁で二役こなす「二徳鉋」です。
この鉋でも溝の脇を削ることができます。
溝だけではなく、材料が直角になっている隅の部分を削る鉋です。
意外と隅部分、際というのが加工していても盲点なので使いようによってはとても便利だと思います。
仕上げ鉋というよりは微調整が主です。
こういった特殊な刃や台を作れる職人ももうほとんどいないそうです。
また、いつ必要になるかわからない道具なので最低一丁ずつでも持っておきたいですね。
今週の日曜は久しぶりに訓練校の同期達と金物屋さんに行きます!
自分は電気カンナを新調します。
これでまた、作業効率が上がると思います。
手道具も大事ですが、電動工具をもっと使いこなしてより早く綺麗にモノづくりしたいです。