見習い大工の眞利子です。
今日は久しぶりに道具の話をしたいと思います。
現在、現場では窓枠の加工組み立てをしています。
窓枠が終われば、各部屋への入り口枠の加工に入ります。
製材には丸ノコを、障子溝などは溝切りという電動工具をフルで使います。
電動工具を使った「加工作業」は気の張る重要な工程ですが、同じくらい重要なのが「仕上げ」です。
仕上げ作業は、全て鉋で行っています。
電気カンナなどと違い、材料を仕上げる手カンナは様々な微調整を常にしていないと使えません。
今回はその微調整の中でも、「口埋め」を紹介したいと思います。

今回口埋めする鉋は、使い始めて三年目になる鉋です。
新潟で鉋鍛冶をしている水野清介さんの作です。
鉋の台も無垢材なので湿気などに敏感に反応し、狂いを起こします。
その都度、台を削り微調整するので刃が出る「刃口」がだんだん開いてきてしまいます。
写真は、口元を埋める前の刃口です。
約五ミリくらいの開きですが、もう限界です。

口元の埋め方や使う材は様々です。
台をまるまる掘って、横から差し込んだり。
台の表側に溝を掘り、口元が開くたびに埋め木材を叩きだせるように加工された台もあります。
材種は好みにもよりますが、黒檀(コクタン)などの高級な材を使われる職人さんもいます。
自分は、やはり使いやすさが一番だと考えています。
それに、クセのない白樫が一番好きなので、口埋めも古い台から割り出した白樫を使いました。
まず、埋め木の方を作り、それに合わせて台を掘っていきます。
墨は始め少し残すように掘り、徐々に崩していきます。

しっかり穴の底まで埋め木が当たったらボンドを入れてくっ付けます。
ハタ金がなかったのでクサビを作って、抑えにしました。
今回、埋め木の杢目は台の杢目と方向を合わせてあります。
それには自分なりの理由があります。
先ほど紹介した、表に溝を掘り埋め木を上端から差し込むと下端には埋め木の木口が出てくるはずです。
当然ですが、木材の表面と切り口である木口では硬さが異なります。
木口を口元に出すと、木口は硬いので仕上げる材を傷つけてしまうそうです。
仕上げたい材を台が傷つけてしまってはしょうがないので、実験的ではありますが杢目を揃えてみました。

翌日、ボンドが固まってからクサビを外し、出っ張りを削り落とします。
鉋の台の調整法は弟弟子が紹介したようなので省略します。
このあと、自分は「二点裏」なので、埋め木と台の継ぎ目が直接仕上げ材に触れないように調整します。
どうでしょうか?
一番始めの刃口と比べ、だいぶ口元を狭く出来たと思います。
この後も、使いながらさらに微調整です。
鉋には一枚刃と二枚刃がありますが、この鉋は裏座の付いた二枚刃なのでそれを考慮して調整します。
実際引いてみると、やや口元が狭すぎて屑が詰まりがちです。
真っすぐで素直な材ばかりを削っているわけではないので、ある程度厚削りも出来るようにします。
やはり、口埋めすると使いやすくなります。
引きも軽くなりました。

最後に悲劇です。
鉋だけでなく、片刃で出来ている刃物は研ぎやすさや刃先に掛かる負担を考慮して裏鋤きがされています。
その為、定期的に裏を叩き出す必要があります。(裏出し)
今回の仕上げ作業でもすでに二度ほど裏出ししています。
窓枠も佳境に差し掛かり、また裏が切れました。
ここで最大の悲劇です、、、
通常柔らかい地金の部分を叩くのですが、手が滑ってしまい鋼を直接叩いてしまいました。
それも動揺を隠しきれず二か所も、、、
パリっと!簡単に欠けてしまいます。
調子の良かった鉋だけにショックも大きいです。
裏出しは叩き出すものだと教わったので、躊躇せず叩きますがたまにこのようなことがあります。
欠けが取れるまで研ぎ下ろすだけですが、鋼がもったいないです。
他の大工さんも是非、裏出しの時は気を付けてください。
以上、鉋の調整についてでした。