見習い大工の眞利子です。
前回に引き続き、現在進行中の刻みについて紹介したいと思います。

前回加工中だった「追っかけ継ぎ手」の仮組です。
刻み三回目ということで、更なる精度の向上を目指しています。
いくら製材精度が昔に比べ良くなったと言っても、木材は湿度や温度の変化で簡単に狂います。
以前、前日に製材直角を出した欅(ケヤキ)が使う当日になって捻じれているということも経験しました。
杉、桧などの針葉樹は欅ほど狂いはしませんが、一晩でも狂いは出るものなのかと驚いた出来事でした。
仮組には、加工精度の確認の意味と建前までの間、継手が狂わないようにする二つの意味があります。
スペースが許すかぎり、組んだ状態で建前まで下小屋の保管しています。

仮組中の継手です。
この継手が強度を発揮するところは、縦方向に発生する継手内部の”摩擦力”
そして、胴付き部分の”圧縮力”です。
化粧材ではないので、主に胴付きと継手の捻じれがないかを確認します。

壁の中に隠れて見えなくなる部材「野物」は仮組も含め、終わりました。
次は、実際に完成後も見える「化粧材」の加工です。
写真は親方が書いた、「図板」です。
大工の棟梁は、設計図面をこのような図板に起こし直して、木拾い、部材の絡みなどを計算します。
写真は大屋根の図板です。
ピンク色でマーキングされているのが化粧材になります。
登り梁が8列、19本からなります。
棟も化粧材になります。

今回軒先に登り梁の鼻先が全て化粧で突き出ます。
写真は、一段引っ込んだ5番6番通りの登り梁です。
左側の下端を斜めに削ってある方が外部に化粧として持ち出す部分です。
軒桁に乗っかる部分が特殊な形になっています。

軒桁との仕口部分を下から見るとこんな感じです。
軒先へ持ち出していると、アゴといって部材同士が噛み合うように組みます。
そのアゴの中に蟻を作ったのは、親方の考えです。
「兜腮掛け」カブトアゴ掛けと勝手に呼んでいます。
この方が捻じれに強いのではないか、という理由だそうです。
この登り梁の仕口は、親方も加工直前まで悩んでました。
屋根全体を支え、建物の印象も大きく左右する部材なので、構造面、化粧面の両方で最善になるように。
大工はどうしても構造重視で考えます。
ちょっと脱線すると「腮掛け」と「相欠き」という組手が一番古い木組みだそうです!
単純な加工で部材の欠損を最小限に抑えているので、一番強いと思います。

ごちゃごちゃしていますが、刻みの相棒たちです。
手道具が全部収まる道具箪笥を作るのが夢ですが、なかなか時間がありません。
残材で即席刻み箱を作りました。
叩きノミに合わせて、幅広で浅めの箱です。
今度はカンナの箱も作りたいです。