見習い大工の眞利子です。
キッチン工事が無事に終わりました!
今回、初めての試みだったのでかなり時間を掛けてしまいました。
形は対面で、IH2台の引き出しが計19か所。
前板の矧ぎ合わせから始まり、全体で2週間以上費やしました。
途中、他の作業等で抜けてもいますが材料も含め、相当高価なものに仕上がっていると思います。

シンク脇の引き出しです。
シナランバーコア合板で箱を作り、引き出し用の持ち出し金物で取り付けていきます。
この状態で引き出しとして使えるように、微調整します。
金物がビス留めの為、作業全体を通して微調整がかなりの割合をしめています。

前板をカンナ掛けしているところです。
水廻りなので、基本塗装とカンナ掛けの併用仕上げになります。
天板は今回、加工屋さんに製材加工してもらいました。
前板は全て、下小屋で木取り矧ぎ合わせしたのですが、矧ぎ方もこだわっています。
写真の板の木目を見てください。
タモ材は、かなり狂いと反りを起こす材種なので、その反りを打ち消すように矧ぎ合せています。
二枚の板の木表と木裏を逆に、尚且つ杢目の向きも反転させています。
こうすることで、互いの反りを打消し合うように矧ぎ合せました。
そして杢目を反転させたことには、もう一つ意味があります。
カンナ掛けをする時、逆目(さかめ)が立ちにくくなるんです。

即席で描きましたが、杢目とカンナ掛けの向きの関係性です。
木材の表は、立木だった時の皮に近い方を言います。
素直に真っ直ぐに育っていれば、杢目は立木だった時の元から末にタケノコ型に入るはずです。
木は、上に向かって伸びるのと同時に太くも育っていきますよね。
なので、木表は「末から元」に削れば、杢目が毛羽立つことはないはずです。
反対に内側になる木裏は「元から末」に削らないとバリバリに毛羽立ってしまいます。
杢目の向きに逆らわないように掛けないと、仕上がりが汚くなってしまうんですね。
ちなみに、木口方向の反りは図のように「木表側」に反ります。
含水率の差なのですが、「木表の方が育ち中で柔らかいから、固い裏より伸縮が大きい」と考えています。

少し脱線してしまいましたが、前板と引手を取り付けました!
天板と面合わせなので、遊びがなく金物の調整でも苦労しました。
前回まで、家具の引手も木で作ったり、掘り込んだりしていましたが金物もカッコいいですね!
個人的には、全部木より金属が少し入った方がメリハリがあって好きです。

作業途中なので、汚くてすみません・・・
向かいのIH側です。
IHの前板は、からみが多かったので写真ではまだ終わっていません。
これから塗装をいれます。

一回目の塗装が入りました!
オスモカラーという植物油由来の塗料で杢目を際立たせるクリアーを塗りました。
今回、現場のコンセプトが家具調で統一することだそうです。
なので、杢目のハッキリとしたタモを使ったのだと思います。
堅木は塗装が入ることでより杢目が引き立ちます。

引手をつけて、完成です。
反り抑制の為に、板の裏にも塗装していますが、今後どのくらい狂いが出てしまうか心配です。
IHの箇所は、ごっそり刳り抜いているので暴れないといいのですが・・・
しばらく使っていただいたあと、経過も見てみたいです。
今回キッチン、キッチンの向かいの家具を図面の読み込みから全てやらせていただきました。
調子の悪いところ、至らないところばかりで苦戦の連続でした。
完成したあと、親方が嬉しそうに「あいつが全部作ったんだ!」と職方さん皆に説明していました。
親方の喜び方が一番嬉しかったです。